会計事務所のAI活用事例|業務時間90%削減を実現した税理士の具体的手法【2026年版】

「AIが会計業務を変える」と言われて久しいですが、実際に成果を出している会計事務所はどれほどあるでしょうか。

ChatGPTやGeminiを「ちょっと触ってみた」程度で終わっている事務所が大半です。一方で、記帳代行にかかる時間を10分の1以下に短縮し、月次業務を20時間から2時間に圧縮している税理士も存在します。この差はどこから生まれるのか。

本記事では、税理士向けコミュニティ「THE CXO」での連続講義と、全国中小企業経友会でのGemini研修という2つの事例をもとに、会計事務所がAIで具体的にどんな成果を出しているのか、その手法を詳しく解説します。

目次

会計事務所がAIを導入すべき3つの理由

理由1: 繁忙期の業務集中が限界に達している

会計事務所の業務は、確定申告時期(1〜3月)と決算期に極端に集中します。この時期、所長もスタッフも朝から深夜まで働くのが当たり前という事務所は少なくありません。

問題は、この繁忙期の業務の多くが「人間がやらなくてもいい作業」で占められていることです。PDFの数字を手入力する、前年の申告書と突合する、顧問先へのメールを一通ずつ書く。こうした定型作業をAIに任せるだけで、繁忙期の負荷は大きく変わります。

理由2: 採用難で「人を増やす」戦略が通用しなくなった

税理士業界は深刻な人材不足に直面しています。税理士試験の受験者数は年々減少し、若手人材の確保は困難を極めます。「忙しいから人を採る」という従来型の解決策は、もはや現実的ではありません。

AIは人を増やさずに処理能力を上げる手段です。1人の税理士がAIを使いこなすことで、これまで2〜3人分の作業量をこなせるようになった事例が、後述するTHE CXOの講義受講者から複数報告されています [A]。

理由3: 「作業代行」から「経営支援」への転換が求められている

記帳代行や申告書作成だけでは、顧問料の価格競争から逃れられません。顧問先が求めているのは、数字を作る人ではなく、数字をもとに経営判断を助けてくれる存在です。

AIに定型作業を任せることで空いた時間を、顧問先への経営提案や資金繰り支援に充てる。この転換を実現するための第一歩が、AI導入です。

【事例1】記帳代行の時間を1/10に短縮|THE CXOコミュニティの連続講義

THE CXO株式会社とは

THE CXO株式会社は、税理士向けの経営者コミュニティを運営する企業です。会員数は当初130名からスタートし、現在は260名にまで拡大しています [A]。会員の多くは独立開業した税理士や会計事務所の所長であり、「事務所経営」と「最新テクノロジーの活用」の両面から学ぶ場を提供しています。

このコミュニティ向けに、株式会社Saixが全6回の連続講義を設計・実施しました。月1回のオンライン形式で、各回90分の構成です。

全6回の講義内容と設計意図

講義は以下の流れで設計しました。

第1回: プロンプトの書き方(基礎)

「AIをGoogle検索の代わりにしか使えていない」という受講者が大半だったため、まずプロンプトの構造から学ぶ回です。指示の出し方、コンテキストの与え方、出力形式の指定など、実務で使える基本を90分で集中的に扱いました。

第2回: 会計事務所向けNotebookLM活用

Googleが提供するNotebookLMを、税法や通達の調査ツールとして活用する方法を解説。紙やPDFでしか存在しない資料をNotebookLMに読み込ませ、自然言語で検索する手法を実践しました。

第3回: ストックデータ × 生成AI

会計事務所が日常的に扱う試算表、元帳、申告書といった「ストックデータ」を生成AIと組み合わせる回です。数字の羅列に過ぎなかったデータから、経営提案に使えるインサイトを引き出す方法を体験しました。

第4回: AIエージェント / GPT-5動向

2026年時点のAI業界の最新動向を共有する回です。AIエージェントが実務にどう影響するか、GPT-5の性能がどの程度の業務を代替しうるかを、会計業務の文脈に落とし込んで解説しました。

第5回: メタプロンプト実践

「プロンプトを書くためのプロンプト」であるメタプロンプトの概念と実践です。顧問先ごとに異なる業務パターンを、テンプレート化して効率的に処理する技術を習得しました。

第6回: 事務所専用ツール自作ワークショップ

最終回は、受講者自身が自分の事務所向けのAI活用ツールを作るワークショップ形式です。これまでの5回で学んだ知識を統合し、「自分の事務所で明日から使えるもの」を持ち帰ることをゴールに設計しました。

受講者の変化と具体的な成果

受講後のアンケート(38名回答)では、97%にあたる37名が「今後も積極的にAI活用を広げたい」と回答しました [C]。また、58%が「明確な効率化を実感した」と答えています。

具体的な数値として報告されたものを挙げます。

  • 記帳代行: お客様によっては処理時間が1/10以下に短縮
  • 提案書・報告書作成: 作成時間が1/10に短縮
  • 月次業務: 20時間 → 2時間(90%削減
  • 面談日報の作成: 1時間 → 15分(75%削減

受講者の声をそのまま紹介します。

「記帳代行業務にかかる時間はお客様によっては10分の1以下になった」

「受講前はGoogle代わりにしか使えなかった生成AIが、なくてはならないツールになった」

「PDFを見ながら手入力していた作業について、Geminiを使って一瞬で完了するようになった」

THE CXO代表からは「このパッケージはヤヴァイ! 顧問先にそのまんま使える!」という評価をいただき、講義内容は「CXOテキスト」「CXOプロンプト」「CXOスライド」としてパッケージ化され、コミュニティ内で継続的に活用されています [A]。

【事例2】税理士260名がAI活用に動いた|中小企業経友会のGemini研修

全国中小企業経友会の背景と課題

全国中小企業経友会は、中小企業を支援する税理士が集まる業界団体です。会員の税理士たちは日々の顧問業務に追われながらも、AIの波が自分たちの業務をどう変えるのかに関心を持っていました [B]。

しかし、導入前の状態は次のようなものでした。

  • AIは「作業の時短ツール」という認識にとどまっていた
  • 何から始めればいいのかわからない
  • 顧問先の財務データをAIに入力して、情報漏洩にならないかという不安

特に3つ目のセキュリティへの懸念は根深く、「使いたいけど怖い」という声が多数ありました。

3段階の研修プログラム

こうした状況を踏まえ、株式会社Saixでは段階的な研修プログラムを設計しました。

ステップ1: Gemini活用セミナー(導入編)

まず全体向けのセミナーで、AIの全体像と会計事務所での活用可能性を伝えました。ここでは「AIに何ができるか」だけでなく、「何をさせてはいけないか」「データの取り扱いで注意すべき点」も明確に説明しています。セキュリティへの不安を最初に解消することが、その後の実践への意欲につながるためです。

ステップ2: 体験型研修(初級・中級)

初級編では、Geminiの基本操作、プロンプトの書き方、Gems(カスタムAI)の活用、Google Workspace連携を扱いました。日報の自動生成、メール文面の下書き、議事録の要約など、すぐに業務で使える実践課題を中心に構成しています。

中級編では、一歩踏み込んだ活用に進みます。市場調査・競合分析へのAI活用、事業計画の壁打ち、実務フローへのAI導入設計、他ツールとの連携まで。「税理士の仕事そのもの」にAIを組み込む方法を体験しました。

ステップ3: 伴走型支援プログラム(全4回)

研修で学んだ内容を「自分の事務所で実際に使える状態」に落とし込むための伴走支援です。全4回のプログラムで、受講者それぞれの業務課題に合わせたAI活用の実装をサポートしました。

研修がもたらした波及効果

研修の成果として注目すべきは、参加者数の変化です。当初130名だったコミュニティの参加者が、研修実施後に260名へと倍増しました [B]。さらに、経友会の非会員の税理士からも問い合わせが日々発生する状態になっています。

「AIセミナーをやっている団体がある」という口コミが業界内で広まり、AIを学びたい税理士がコミュニティに集まるという好循環が生まれています。研修が「集客装置」としても機能した事例です。

「他の会社はどうやってAIを活用しているんだろう?」と気になる方も多いはずです。 実際に成果を出している企業には、いくつかの共通するパターンがあります。

▶︎ 『AI導入で成果を出した企業の共通点 — 事例10選』を見てみる

WHITE PAPER|無料ダウンロード

AI導入で成果を出した企業の
共通点 — 事例10選

✓ 10業種の具体的な成果データ

✓ 成功企業の5つの共通点を分析

✓ 今日から始められるアクションステップ付き

今すぐ無料でダウンロード →

会計事務所で今すぐ使える5つのAI活用シーン

2つの事例から見えてきた、会計事務所で特に効果が高いAI活用シーンを5つ紹介します。いずれも、特別な技術知識がなくても始められるものです。

シーン1: 記帳代行・仕訳入力の自動化

最も効果が大きいのが記帳代行です。THE CXOの受講者が報告した「処理時間1/10以下」は、この領域で生まれた成果です。

具体的には、PDFの領収書や請求書をGeminiに読み込ませ、勘定科目の判定と仕訳データの生成を行います。従来はPDFを見ながら手入力していた作業が、AIへの指示一つで完了します。もちろん最終的な確認は人間が行いますが、「ゼロから入力する」のと「AIの出力を確認・修正する」のでは、かかる時間がまったく違います。

シーン2: 税法・通達の調査効率化

NotebookLMを活用した税法調査は、第2回講義で特に反響が大きかったテーマです。膨大な税法や通達のPDFをNotebookLMに読み込ませておけば、「この取引に適用される特例は?」「この経費は損金算入できるか?」といった質問に、根拠条文つきで回答が返ってきます。

法律の条文検索にかけていた時間が大幅に短縮されるだけでなく、見落としのリスクも軽減されます。

シーン3: 顧問先への経営提案資料の作成

試算表の数字をAIに読み込ませ、「前年比で特に変動が大きい項目」「資金繰りの改善余地」「同業他社との比較ポイント」を自動で抽出・整理する活用法です。提案書や報告書の作成時間が1/10になったという報告は、この使い方から生まれています [A]。

重要なのは、AIが「答え」を出すわけではないということです。数字の中から注目すべきポイントを拾い上げてくれるので、税理士はそこに自分の専門知識と経験を載せて提案に仕上げます。

シーン4: メール・日報・議事録の効率化

面談日報の作成が1時間から15分に短縮された事例は、この領域です。面談中のメモや録音データをAIに渡し、要点を整理してもらう。顧問先へのフォローアップメールも、面談内容をもとにAIが下書きを作成してくれます。

一つひとつは小さな時間短縮ですが、毎日発生する業務だけに、月間・年間で見ると積み上がる効果は大きいです。

シーン5: 事務所内の教育・マニュアル整備

新人スタッフの教育やマニュアル作成にもAIは使えます。業務手順をAIに説明させてドキュメント化する、新人からの質問にAIが一次回答する仕組みを作るなど、「教える」業務の負荷を下げる活用が広がっています。

THE CXOの第6回ワークショップでは、自分の事務所向けに教育ツールを作った受講者もいました。

AI導入で失敗しないための3つの注意点

注意点1: セキュリティとデータ管理のルールを先に決める

経友会の研修でも最大の障壁となっていたのが、情報漏洩への不安です。これは「気をつけましょう」で済む話ではなく、具体的なルール策定が必要です。

まず、どのデータをAIに入力してよく、どのデータは入力してはいけないのかの線引きを明確にします。Google Workspaceの有料プランでは、入力データがAIの学習に使われない設定が可能です。こうした技術的な対策と運用ルールの両面から、安全な環境を整えてから活用を始めることが重要です。

注意点2: 全業務を一気にAI化しようとしない

THE CXOの講義が全6回、経友会の伴走支援が全4回と、いずれも段階的なプログラムになっているのには理由があります。一度にすべてを変えようとすると、スタッフの抵抗感が強まり、結局誰も使わなくなるからです。

まずは1つの業務で成果を出し、その体験を事務所内で共有する。成功体験が広がれば、他の業務への展開は自然と進みます。THE CXOの受講者が「Google代わりにしか使えなかった生成AIが、なくてはならないツールになった」と言っているのは、この段階的な変化の結果です。

注意点3: 最終判断は必ず税理士が行う

AIが生成した仕訳や税務判断を、そのまま無検証で使うことは絶対に避けてください。AIは非常に有能なアシスタントですが、税理士法上の責任を負うのはあくまで人間の税理士です。

AIの出力は「たたき台」として使い、最終確認と判断は必ず専門家が行う。この原則を守ることで、効率化と品質を両立できます。実際にTHE CXOの講義でも、この点は繰り返し強調されていました。

まとめ|会計事務所のAI活用は「小さく始めて大きく育てる」

本記事で紹介した2つの事例から、共通するポイントが見えてきます。

THE CXOの連続講義では、38名中37名(97%)が継続的なAI活用に前向きな姿勢を示し、記帳代行1/10、月次業務90%削減といった具体的な成果が生まれました。全国中小企業経友会では、段階的な研修設計により参加者が130名から260名に倍増し、業界全体にAI活用の波が広がっています。

成果を出している会計事務所に共通しているのは、次の3点です。

  • 最初から完璧を目指さず、1つの業務から始めている
  • 体系的に学ぶ場(研修・コミュニティ)を活用している
  • セキュリティと品質管理のルールを事前に整備している

AIの進化は日々加速しています。「もう少し様子を見てから」と待っている間に、先行する事務所との差は開く一方です。本記事で紹介した事例が、AIと向き合う最初の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

会計事務所・税理士事務所へのAI導入支援について、詳しくはお気軽にご相談ください。

▶︎ 無料相談はこちら

WHITE PAPER|無料ダウンロード

経営者のためのAI導入
完全チェックリスト

✓ 導入前に確認すべき50項目を収録

✓ 社内稟議資料にそのまま使える

✓ 運用定着・効果測定までカバー

今すぐ無料でダウンロード →

Contact

AI/DXの導入に関する
ご相談・お問い合わせ

「自社にAIをどう導入すれば良いかわからない」
そのような漠然としたご相談でも大丈夫です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次