「税理士として顧問先にもっと価値を提供したい。でもAIをどう業務に組み込めばいいのかわからない」——そんな課題を抱える会計事務所は少なくないのではないでしょうか。
ChatGPTを触ってみた。便利だとは思う。しかし、属人的で感覚的な使い方にとどまり、事務所全体の業務フローが変わるところまでは至っていない。最新技術のアップデートも追いきれず、「結局、前のやり方に戻ってしまった」という声も多く聞かれます。
本記事では、税理士が真の経営パートナーへと進化するためのコミュニティ「THE CXO」様で実施した、全6回のAI連続講義の全容を紹介します。38名へのアンケートでは97%が「今後も積極的にAI活用を広げたい」と回答。記帳代行業務の工数が1/10以下、提案書作成が1/10に短縮されるなど、会計事務所の現場で再現性のある成果が生まれた事例です。
会計事務所が抱えていた3つの課題

THE CXO様は、税理士が単なる申告代行ではなく「真の経営パートナー」として顧問先に貢献することを目指すコミュニティです。月1回の少人数グループコンサルティングと月2回の全体研修を軸に、会計事務所の経営力強化を支援しています。参加者は130名を超えます。
しかし、生成AIの活用に関しては、次のような課題がありました。
課題1:属人的・感覚的なAI利用
ChatGPTを日常的に使っているメンバーはいるものの、その使い方は個人の試行錯誤に依存していました。「うまくいったプロンプト」が共有されることはなく、同じ業務でも人によって出力品質に大きな差が出る状態です。再現性がなく、事務所全体の業務効率化にはつながっていませんでした。
課題2:顧問業務への応用方法が不明確
「AIが便利なのはわかる。でも、試算表の分析や経営計画の策定、顧問先への提案にどう使えばいいのか」——この問いに対する具体的な答えが見えていませんでした。会計事務所特有の業務フローにAIを組み込むためのノウハウが不足していたのです。
課題3:最新技術のキャッチアップ不足
生成AIの進化スピードは極めて速く、半年前の知識はすでに古くなっています。NotebookLMやGPTs、メタプロンプトといった新しい技術や手法が次々と登場する中、忙しい日常業務の合間にそれらをキャッチアップし、実務に落とし込む余裕がないという声が多くありました。
全6回AI連続講義プログラムの全体設計
これらの課題を解決するために、全6回の連続講義プログラムを設計しました。「ツールの使い方を教えて終わり」ではなく、回を重ねるごとにスキルが積み上がり、最終回には自分の事務所専用のAIツールを自作できるレベルまで引き上げる構成です。
| 回 | テーマ | 到達目標 |
|---|---|---|
| 第1回 | プロンプトの書き方 | 再現性のある指示を出せるようになる |
| 第2回 | NotebookLM活用 | 顧問先データを使った分析・要約ができる |
| 第3回 | ストックデータ×生成AI | 事務所の蓄積データをAI活用の資産に変える |
| 第4回 | 最新技術とビジネス活用 | 陳腐化しないスキルの土台を築く |
| 第5回 | メタプロンプト実践 | AIにプロンプトを作らせ、出力精度を飛躍的に高める |
| 第6回 | 事務所専用ツール自作ワークショップ | GPTsで自事務所の業務に特化したAIツールを構築する |
第1回:プロンプトの書き方——「再現性」の起点
初回はすべての土台となるプロンプト設計です。多くの受講者が「Google代わり」にしかAIを使えていなかった状態から、マークダウン形式やYAML形式を用いた構造化された指示の出し方を学びました。「同じプロンプトを使えば、誰がやっても同じ品質のアウトプットが出る」——この再現性こそが、属人化を解消する第一歩です。
第2回:NotebookLM活用——顧問先データとの対話
第2回では、GoogleのNotebookLMを活用し、試算表や面談記録などの顧問先データを読み込ませて分析・要約する手法を実践しました。「お客様のデータを入れて試したら、良い感じで返ってきて感動した」という声が上がるなど、手応えを感じた受講者が多い回でした。
第3回:ストックデータ×生成AI——蓄積資産の活用
会計事務所には、長年蓄積された財務データ、面談記録、業界知見という膨大な「ストックデータ」が眠っています。第3回では、このストックデータを生成AIと組み合わせて活用する方法を学びました。顧問先ごとのSWOT分析や3C分析を即座に展開できるようになったという事例も報告されています。
第4回:最新技術とビジネス活用——陳腐化しないスキル
生成AIの世界は変化が激しく、個別のツール操作だけを覚えても半年後には役に立ちません。第4回では、技術の進化を俯瞰的に捉え、新しいツールが登場しても応用できる「考え方」を身につけることに注力しました。
第5回:メタプロンプト実践——AIにプロンプトを作らせる
メタプロンプトとは、「AIに良いプロンプトを作らせるためのプロンプト」です。この手法を習得することで、プロンプト作成の試行錯誤にかかる時間が大幅に短縮されます。受講者からは「コンサルの幅が広がる」「回答精度も高まるし、AIを使える範囲もさらに広がる」といった反応が得られました。
第6回:事務所専用ツール自作ワークショップ
最終回は、GPTs(カスタムGPT)を使って自事務所の業務に特化したAIツールを実際に構築するワークショップです。マークダウン形式でナレッジを整理し、GPTsに読み込ませることで、顧問先対応や社内マニュアルとして活用できるツールが完成しました。
「顧問先への提供価値を高めたいが、AIをどう業務に組み込めばいいかわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。成果を出している会計事務所には、共通するアプローチがあります。
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成果と参加者の声——数字で見る変化
定量成果:アンケート結果(回答者38名)
全6回終了後に実施したアンケートでは、以下の結果が得られました。
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 「今後も積極的にAI活用を広げたい」(4〜5点) | 38名中37名(97%) |
| 「明確な効率化」以上を実感 | 38名中22名(58%) |
| 「業務構造が変わるレベル」の改善を実感 | 38名中5名(13%) |
具体的な業務時間の削減実績も報告されています。
| 業務領域 | Before | After | 削減効果 |
|---|---|---|---|
| 記帳代行業務 | — | — | 1/10以下に短縮 |
| 提案書・報告書作成 | — | — | 1/10に短縮 |
| 月次決算添付書類作成 | 10時間/月 | 1時間/月 | 90%削減 |
| 面談日報作成 | 約1時間/件 | 約15分/件 | 75%削減 |
| 事務処理全般 | — | — | 1/5〜1/10に軽減 |
| 寄稿・校閲業務 | 5時間/月 | 1時間/月 | 80%削減 |
| 伝票入力 | 3時間 | 1時間 | 67%削減 |
参加者の声
「提案書や報告書の作成に費やしていた時間が、肌感覚で受講前に比して1/10程度になった。全く初歩的な使い方であっても従前の業務の数倍の付加価値を提供してくれていると感じています。貴重な講義をありがとうございました。」
——公認会計士・税理士
「社員によると、記帳代行業務にかかる時間はお客様によっては10分の1以下になっているそうです。NotebookLMを活用して、事前にお客様へ話すことを社員と打ち合わせをする時に社員教育として活用しています。教えてもらって直ぐにマークダウン形式にしてGPTsにデータを読み込ませると、本当に精度が上がりました。」
——税理士事務所代表
「受講前はGoogle代わりにしか使えなかった生成AIが、なくてはならないツールになった。特に月次決算の添付書類をどうするか(ツール未導入)であったところから、生成AIで作成できるようになったことが大きい。」
——公認会計士・税理士
「事務処理負担感が1/5〜1/10になった実感があります。事務所通信(毎月のニュースレター)1200字レベルの原稿作成や、季節の挨拶文の自動生成などで大幅な時短。NotebookLMとの連携で面談内容を即座に資料化。SWOT分析、3C分析、アンゾフのマトリクスなどを顧客ごとに即座に展開できる。」
——公認会計士・税理士
「お客様との面談日報作成:これまではメモを頼りに長いと1時間くらいかけて日報を作成していました。音声データから文字起こし、AI議事録作成で15分くらいで終えられます。」
——税理士事務所スタッフ
「かいち先生に教えて頂いているだけでも1/3くらいは業務時間は減っていると思います。すべての講義を受講させて頂きました。クリエイティブな業務において大変効果を感じています。生成AIの先生から直接教えて頂けることは、とても価値を感じています。今後もぜひ継続して頂きたいです。」
——公認会計士・税理士
成功を支えた3つのポイント
1. 「業界特化」の実践演習
汎用的なAI研修ではなく、会計事務所の実務に完全に特化した演習を設計しました。試算表の分析、経営計画の策定、顧問先への提案書作成——受講者が翌日の業務でそのまま使えるテーマだけを扱っています。「会計事務所向けに使うならこんな感じ、と具体的にお示しいただいたところが非常によかった」という声が、その効果を端的に示しています。
「丁寧な解説と、業界に合った使い方の実演、参加者との質疑応答がリアルで、大変参考になりました。視聴を通して、確実に仕事のやり方が変わると実感したのが、一番の収穫です。」
——税理士事務所代表
2. 「積み上げ式」のカリキュラム設計
全6回を通じて、プロンプトの基礎→データ活用→最新技術の理解→メタプロンプト→ツール自作と、段階的にスキルが積み上がる設計にしました。単発の研修では得られない「複利効果」が生まれ、後半の回になるほど受講者の活用レベルが加速度的に向上しました。
「陳腐化しない、ずっと使えるスキルというのがとてもありがたかったです。GPTsの活用が広がりそうです。」
——経営者
3. 「顧問先への提供価値」を常にゴールに据える
研修の目的は、受講者自身の業務効率化だけではありません。最終的なゴールは「顧問先への提供価値の向上」です。ストックデータの活用、経営分析の高度化、提案書の品質向上——すべてのカリキュラムが、この目的に向かって設計されています。「AIにより客観的な意見やデータ収集ができるようになり、より効果的な意思判断ができるようになった」という声は、まさにこのゴールが達成されたことの証左です。
「毎回が新しい事ばかりでとても楽しみにしていました。出来ることはたくさんあることがわかりました。自分の壁打ちとして言語化できそうなので、自社の経営計画書の作成から試していこうと考えています。」
——税理士事務所スタッフ
まとめ——会計事務所のAI活用は「内製化」がカギ
THE CXO様の事例が示しているのは、「AIを使えるようになること」と「AIで成果を出し続けること」の間には、明確な距離があるという事実です。
その距離を埋めたのが、業界特化の実践演習、積み上げ式のカリキュラム、そして顧問先への提供価値を常にゴールに据えた設計でした。結果として、受講者の97%が「今後も積極的にAI活用を広げたい」と回答し、多くの事務所で具体的な工数削減と品質向上が実現しています。
一過性のツール研修ではなく、再現性の高いAI活用フローを事務所内に「内製化」すること。それが、会計事務所がAIで持続的な成果を出すためのカギです。
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