スタッフを1人も雇わず、顧問先約60社をひとりで担当する税理士がいます。畠山謙人(はたけやま けんと)氏。公認会計士・税理士の資格を持ち、Xの長文投稿が約339万リーチを記録してForbes JAPANにも取り上げられた「AI税理士」です。本記事は、株式会社Saix代表の杉田海地がYouTube「かいちのAI大学」で畠山氏を直接インタビューした一次情報をもとに構成しています。語られたのは、Claude Codeという「会話するように業務を頼めるAIツール」を使った具体的な活用事例7つです。公開記事の二次まとめではなく、本人が実務で使う数値とつまずきの実像を、コピペで使えるプロンプト例つきでお届けします。
現役AI税理士が実践するClaude Code活用事例の全体像
結論から言えば、畠山謙人氏の高い生産性を支えているのは「AIへの指示の仕組み化」です。単発でAIに頼むのではなく、業務のルールを文書として一度書いておき、毎回それを参照させています。だからこそ、ひとりで約60社を回せています。
Claude Codeは、文章で指示するとパソコン上のファイル操作や外部サービスとの連携まで自動でこなすAIツールです。チャット型AIが「答えを返す」のに対し、Claude Codeは「作業そのものを実行する」点が大きく異なります。畠山氏はこの特性を、会計事務所の定型業務に徹底的に当てはめています。
スタッフ0人で顧問先60社を回す仕組み(スキル=憲法/メモリ=現地ルールの使い分け)
畠山氏の運用の核は「スキル」と「メモリ」の使い分けです。両者を混同せず、役割をはっきり分けることで指示のブレを抑えています。
スキルは、いわば「憲法」にあたる基本ルールです。AIにどんな役割を担わせ、どんな仕事をどう進めてほしいかの大枠を、マークダウン(見出しや箇条書きで構造化した軽量な文書形式)で書いておきます。畠山氏は長文にしすぎないことを重視しています。現在は約30個のスキルを作成し、日常的にメインで使うのは約10個に絞り込んでいます。
一方のメモリは「細かい現地ルール・記憶」です。出力を見て「ここは違う」「この顧問先には特有の処理がある」と感じたとき、その都度フィードバックを記録します。するとAIが必要なときに自ら見に行き、好みや例外処理を反映します。憲法で大枠を決め、現場の運用ルールはメモリで蓄積する。この二層構造が再現性を生んでいます。
| 項目 | スキル(憲法) | メモリ(現地ルール) |
|---|---|---|
| 役割 | AIの役割・仕事の進め方の大枠 | 個別の例外・好み・フィードバック |
| 書き方 | マークダウンで簡潔に(長文にしない) | 「ここは違う」等を都度追記 |
| 参照タイミング | 基本ルールとして常時適用 | AIが必要な都度に自ら参照 |
| 畠山氏の運用数 | 約30個作成・メインで約10個 | 顧問先ごとの特有処理を蓄積 |
この設計思想を基礎から学びたい所長には、税理士のためのClaude Code入門|ターミナルAIで事務所業務をまるごと自動化が参考になります。仕訳ルールの定義から無人実行まで、ハンズオン形式で解説しています。
AIに任せる業務・人間が残す業務の線引き
所長が最初に決めるべきは「何をAIに渡し、何を自分の手に残すか」です。畠山氏はこの線引きを明確にしています。曖昧なままAIに丸投げすると、責任の所在が崩れるからです。
AIに任せるのは、仕訳登録・請求書処理といった会計作業、レポート(書類)のドラフト作成、ToDoや連絡の管理です。いずれも判断基準を文書化しやすく、量が多い業務です。逆に人間が残すのは、税務上の最終判断、顧客との戦略的な面談、申告書の最終チェックです。つまり「責任を負う業務」だけを手元に置いています。
畠山氏は将来的に、1次・2次チェックもAIに任せ、人間は最終サインのみにしたいと語ります。チェックの層を厚くしながら、人間の関与点を最小化していく構想です。

| 区分 | 具体的な業務 | 理由 |
|---|---|---|
| AIに任せる | 仕訳登録・請求書処理・レポートのドラフト作成・ToDo/連絡管理 | 判断基準を文書化でき、量が多い定型業務 |
| 人間が残す | 税務上の最終判断・戦略的な顧客面談・申告書の最終チェック | 責任を負う業務であり、専門家の署名が必要 |
【事例1〜3】会計処理を自動化するClaude Code活用事例
ここからは具体的な活用事例です。まずは会計事務所の中核である記帳まわり。畠山氏はこの領域で、毎晩約60社分を自動処理する仕組みまで作り込んでいます。
各事例には「プロンプト例」を添えました。Claude Codeは自然な日本語で指示できるため、下記のようなイメージで頼みます。なお、これらは畠山氏の逐語ではなく、読者が自分の事務所で再現するための文例です。実際は顧問先名やルールを自社の言葉に置き換えて使ってください。
事例1 freee未登録明細の自動予測・記帳(毎晩21時・60社/2段階判定でセキュリティ配慮)
1つ目は、freee会計に口座連携された未登録明細を自動で記帳する仕組みです。従来は、連携された明細を1件ずつ人が見て、勘定科目を選んで登録していました。60社分となれば相当な作業量です。畠山氏はこの手作業の負担を、ほぼゼロにしています。
具体的には、freeeから取得した未登録明細(実演では約50件のダミーデータ)をAIが読み取り、勘定科目を推測して登録します。推測できない明細や、税金・社会保険料など人間が確認すべき支払いは「スキップ」し、AIからルール追加の要望を返してきます。判断に迷うものは無理に登録しない設計です。
判定のイメージは次のとおりです。日常的な明細はパターン化して自動で寄せ、判断がいるものは人に回します。
| 明細の内容(例) | 推測される勘定科目 | AIの扱い |
|---|---|---|
| Uber(タクシー利用) | 旅費交通費 | 自動で登録 |
| Uber Eats | 会議費 | 自動で登録 |
| 税金・社会保険料の支払い | (人の確認が必要) | 登録せずスキップ |
| 辞書に該当しない初見の明細 | (判断が難しい) | スキップ+ルール追加を提案 |
プロンプト例(自然な日本語でこう頼むイメージ)
「freeeの〇〇社の未登録明細を取得して、勘定科目を推測して登録して。Uberのタクシーは旅費交通費、Uber Eatsは会議費として扱って。税金や社会保険料など人の確認が必要なものは登録せずにスキップし、追加したほうがよいルールがあればまとめて教えて。」
注目すべきはセキュリティです。勘定科目はまずローカル(手元のパソコン内)の辞書で1次判定します。そこで合致しない場合のみ、サーバー上のAI(大規模言語モデル)に上げて推測させる2段階構造です。これにより、外部に渡すデータを最小限に抑えています。この仕組みを毎晩21時に走らせ、約60社分の未登録明細をまとめて自動処理しています。
- ポイント1:よく出る明細はローカル辞書で即判定。AIに渡すのは「辞書で判断できなかったものだけ」
- ポイント2:迷う明細は登録せずスキップ。誤記帳より「保留」を優先する安全設計
- ポイント3:毎晩決まった時間に自動実行。朝にはチェックすべき明細だけが残っている
| 観点 | 従来(手作業) | 導入後(AI記帳) |
|---|---|---|
| 明細の確認 | 1件ずつ人が目視で確認 | AIが一括で読み取り勘定科目を推測 |
| 処理タイミング | 担当者が手が空いたときに着手 | 毎晩21時に約60社分を自動実行 |
| 判断の保留 | 迷ったら後回し・属人化しやすい | 迷う明細はスキップしルール追加を提案 |
事例2 請求書・領収書のOCR読み取り→仕訳案作成(機密情報を削ぎ落とす工夫)
2つ目は、PDFの請求書や領収書を読み取って仕訳案を作る活用です。紙やPDFを目で追いながら入力する作業を、AIが肩代わりします。
指定フォルダに置いたPDFをOCR(画像から文字を読み取る技術)で認識させ、AIに仕訳を考えさせます。精度の実像も率直です。1枚の請求書に外注費と立替経費が混在しているような複雑なケースでも、要素を分解して勘定科目を割り分けます。
| 1枚の請求書に含まれる項目(例) | 振り分ける勘定科目 |
|---|---|
| 本体のサービス料金 | 外注費 |
| 明細内の電話・回線の費用 | 通信費 |
| 移動でかかった新幹線代 | 旅費交通費 |
プロンプト例(自然な日本語でこう頼むイメージ)
「このフォルダにある請求書PDFを読み取って、仕訳案を作って。外注費・通信費・旅費交通費など内訳が混在している場合は、勘定科目ごとに金額を分けて。振込先口座などの個人情報は出力に含めないで。」
機密対策も徹底されています。ファイルをそのままサーバーへ上げるのではなく、AIがフォルダ越しに見に行く仕様です。さらに、振込先口座などの機密情報や仕訳に不要な情報を削ぎ落とす関数を間にかませています。
- PDFは外部に送らず、AIが手元のフォルダを参照する形にする
- 振込先口座など仕訳に不要な情報は、AIに渡す前に削ぎ落とす
- 現状はAIが約6割を処理し、残り約4割は人が補正。完全自動ではなく「下書き作成+人の確認」前提
事例3 残高試算表のAI点検(異常値の指摘・トップ20抽出)
3つ目は、仕訳登録後の残高試算表をAIに点検させる活用です。約60社を1件ずつ人が開いて確認する手間を大きく削ります。
会計処理後のデータをAIがチェックし、異常値を指摘します。実際に返ってくる指摘は、当たりをつけるのに十分具体的です。
- 「利益に対して税金が小さすぎる」
- 「同期残高と帳簿がズレている口座がある」
- 「交際費などの特定の経費が大きすぎる」
プロンプト例(自然な日本語でこう頼むイメージ)
「〇〇社の残高試算表をチェックして、異常がありそうな科目を指摘して。まずは金額の大きいトップ20だけを見て、利益や前年とのバランスで違和感がある項目を、理由つきで挙げて。」
運用上の工夫もあります。「金額トップ20だけ抽出して」と指示すれば、人が別作業をしている間にAIが展開します。全件を網羅的に見るのではなく、リスクの高い箇所に視点を寄せる。これにより、60社を端から全部開く作業から、当たりのついた箇所を確認する作業へと変化するわけです。チェック業務の負荷が集中しがちな所長にとって、効果は大きいといえます。
【事例4〜5】情報集約と顧客対応を変える2つの活用法
記帳の自動化に続くのは、所長の時間を奪う「連絡対応」と「提案業務」です。畠山氏はこの2領域でも、AIに前さばきを任せています。
事例4 複数チャット・メールの自動集約(インボックス機能と連携の現実)
4つ目は、散らばった連絡ツールの新着を1か所に集約する活用です。GmailやSlackなど複数の窓口を開いて回る時間を減らします。各ツールの新着を自動取得し、未読内容を要約して知らせます。たとえば「〇〇のサイン依頼が来ています」といった形です。
プロンプト例(自然な日本語でこう頼むイメージ)
「GmailとSlackの未読を全部確認して、対応が必要なものだけ要約して。『誰から・何の件・いつまでに・対応の要否』の順でリストにして。」
連携の成否も具体的に語られました。すべてが一発でつながるわけではなく、つながる範囲を見極めながら進めるのが現実です。
| ツール | 連携状況 | 接続方法・補足 |
|---|---|---|
| Gmail | 連携できた | MCPサーバー(外部サービスとAIをつなぐ仕組み)経由 |
| Slack | 連携できた | API経由 |
| 個人LINE | 苦戦中 | 公式アカウントは可だが個人は不可 |
| Discord / Chatwork / メッセンジャー | 苦戦中 | API制限・設定の問題。ブラウザ拡張等での手動回避を検討 |
AI活用は万能ではありません。連携できる窓口から着手し、難しいものは手動回避と割り切る。この見極めが現実的だと、畠山氏は率直に語ります。
事例5 面談30分後に届く提案書の自動生成
5つ目は、顧客面談後の提案書・見積書を自動生成する活用です。これは顧客体験を劇的に変えた事例として語られました。新規見込み客とのMTG後、面談内容を踏まえた提案書(Word・約4〜5ページ)をAIが作成します。
フローはこうです。Notionに溜めた面談の文字起こしテキストと、別途作った見積書PDFをAIに渡します。エラーを防ぐため、あえて手動でコピペすることもあるそうです。提案書は次の3部構成です。
| 構成 | 内容 | 必要なインプット |
|---|---|---|
| 第1部 現状整理 | 相手の課題・使っている会計ソフトまで踏み込んで言語化 | 面談の文字起こしテキスト |
| 第2部 解決方法と伴走スタイル | どう関わり、何をどの順で進めるかを具体的に提示 | 自社のサービス・進め方 |
| 第3部 見積額 | 金額と「なぜその金額か」のストーリーを添える | 別途作成した見積書PDF |
プロンプト例(自然な日本語でこう頼むイメージ)
「添付の面談文字起こしと見積書PDFをもとに、提案書をWordで4〜5ページ作って。構成は①現状整理(相手の課題と使っている会計ソフト)②解決方法と進め方③見積額(金額の根拠も)。相手が面談で話した言葉を引用して、その会社専用に見えるようにして。」
結果として、面談終了の約30分後にはパーソナライズされた提案書を送付できます。人は別作業をしながら実行でき、顧客の「もう届いた」という驚きが受注につながります。
【事例6〜7】発信と分析を効率化する2つの活用法
最後は、集客の源泉である情報発信と、専門性が問われる財務分析です。畠山氏のXでの発信力(約339万リーチ)の裏側にも、AIの下支えがあります。
事例6 X発信記事のドラフト作成(A/B案→約5回の注文で仕上げ)
6つ目は、X(旧Twitter)の投稿文ドラフトをAIに作らせる活用です。発信を継続するうえで、ネタ出しと初稿作成の負担を軽くしています。セミナースライドのHTMLリンクなどをAIに渡し、投稿文案を作らせます。
工夫は「一発で完璧を狙わず、注文を重ねて精度を上げる」進め方です。おおよそ次のような流れで、約5回のやり取りを経て完成度を100%まで引き上げます。
- スライドのリンクを渡し、A案・B案など複数パターンを出させる
- 方向性を選ぶ(例:「セキュリティ設計を全面に押し出す」)
- 過去の業務ログからネタを探して内容を膨らませる
- 言い回しやトーンを自分の発信スタイルに寄せて調整する
- 細部を整えて投稿できる形に仕上げる
プロンプト例(自然な日本語でこう頼むイメージ)
「このセミナースライド(URL)の内容で、Xの長文投稿を2案つくって。1案はセキュリティ設計を前面に、もう1案は時短効果を前面に。私の過去の投稿のトーンに寄せて、最初の1行で読者の手を止める書き出しにして。」
事例7 上場企業150ページ決算書の財務分析(半日→約10分)
7つ目は、上場企業の決算書を読み込ませて財務分析させる活用です。人が読めば半日かかる大量資料の分析を、約10分に短縮します。ある新規上場企業の有価証券届出書や決算書(約150ページのPDF)を読み込ませ、財務分析させます。出力はマークダウンで整理され、次のような項目を含みます。
| 出力項目 | 含まれる内容 |
|---|---|
| 会社概要 | 事業の全体像・基本情報 |
| KPI | 事業を測る主要指標 |
| 事業詳細 | 収益の柱・事業の中身 |
| 資本の動き | エクイティの歴史・資金調達額・ファンドの参画タイミング |
| 株主構成 | 主要株主と持分 |
| 参照ページ | 各項目の根拠にしたページ番号を明記 |
プロンプト例(自然な日本語でこう頼むイメージ)
「この有価証券届出書PDF(約150ページ)を財務分析して。会社概要・KPI・事業内容・資本の動き(資金調達の履歴や出資者)・株主構成をマークダウンで整理して。各項目は、根拠にしたページ番号もあわせて書いて。」
登記簿謄本を取得して設立時からの流れを追記することも可能です。ただし限界もあります。PDFが10個など大量すぎると精度が落ちる懸念があると、畠山氏は注意点も添えています。畠山氏はClaude Codeが実務で使えるようになって以降、こうした業務フローを大きく見直し、ある業務では処理時間を約5時間から約50分に短縮したと語っています。

| 事例 | 業務領域 | 主な効果・特徴 |
|---|---|---|
| 1 | freee未登録明細の自動記帳 | 毎晩21時・約60社を自動処理/2段階判定でセキュリティ配慮 |
| 2 | 請求書・領収書のOCR仕訳 | 機密情報を削ぎ落とし/現状AI6割・手動4割 |
| 3 | 残高試算表のAI点検 | 異常値を指摘・トップ20抽出で当たりをつける |
| 4 | 連絡ツールの自動集約 | Gmail・Slackは連携成功/LINE・Chatwork等は苦戦中 |
| 5 | 提案書の自動生成 | 面談の約30分後にパーソナライズ提案書を送付 |
| 6 | X発信記事のドラフト | A/B案提示→約5回の注文で完成度100% |
| 7 | 上場企業の財務分析 | 約150ページの決算書分析を半日→約10分 |
自社事務所でClaude Code活用を再現する3ステップ
では、畠山謙人氏の事例を自社の事務所でどう再現するか。重要なのは、いきなり全自動を目指さないことです。株式会社Saixはこれまでに会計事務所への研修・コンサルティングを130件以上行ってきました。その経験からも、再現の勘所は次の3ステップに集約されます。
| ステップ | やること | つまずき回避のコツ |
|---|---|---|
| 1. セキュリティ設計 | ローカル1次判定→必要時のみAIに上げる構造を組む | 機密情報は渡す前に削ぎ落とす。順番を逆にしない |
| 2. スキル/メモリ設計 | 1業務1スキルで小さく作る | 最初から長文ルールを書かない。例外はメモリに追記 |
| 3. 連携・環境の見極め | つながる窓口から着手する | 難しい連携は手動回避。常時稼働には相応のPCスペック |
ステップ1 機密を守る2段階構造(ローカル1次判定→必要時のみLLM)
最初に固めるべきはセキュリティです。顧問先の機密データを扱う以上、ここが崩れると導入そのものが止まります。畠山氏の事例1が好例です。勘定科目はまずローカルの辞書で1次判定し、合致しない場合のみAIに上げる構造が有効です。
請求書処理でも、振込先口座などの不要な機密情報を削ぎ落とす関数を間にかませていました。外部に渡すデータを「必要最小限」に絞る設計を、最初の業務で必ず組み込みます。守秘義務を負う士業だからこそ、この順番を逆にしてはいけません。
ステップ2 スキルとメモリを小さく設計する
次に、指示の仕組みを作ります。ここで陥りやすいのが、最初から完璧な長文ルールを書こうとすることです。畠山氏の事例2や事例3が示す通り、スキルを長文にしすぎず、大枠だけをマークダウンで書くのがコツです。
現実的なのは「1業務1スキル」の発想です。たとえば「未登録明細の記帳ルール」というスキルを1つ作り、別に「残高試算表の点検ルール」というスキルを作る。1つのスキルに複数業務を詰め込まず、業務ごとに小さく分けておくと、修正もメモリ追記も業務単位で完結します。そして運用しながら「この顧問先は科目が違う」といった例外をメモリに追記していきます。畠山氏が約30個のスキルを作りつつメインで約10個に絞っていたように、数を増やすより「使うものを磨く」発想が効きます。型の言語化は、会計事務所のAI活用 完全ガイドで全体像を押さえてから着手すると迷いません。
ステップ3 つまずきやすい点(API連携の壁・PC環境)
最後に、現実のつまずきを先に知っておきます。畠山氏の事例4が示す通り、連絡ツールの連携はすべてが成功するわけではありません。GmailやSlackはつながっても、個人LINEやChatworkはAPI制限で苦戦していました。連携できる窓口から着手し、難しいものは手動回避と割り切る判断が必要です。
PC環境も見落とせません。畠山氏はメインPCにモニター4枚、サブPCで処理を常時稼働させる構成を取りつつ、ChromeとAIツールでメモリ使用率が90%に達するのが悩みだと語ります。自動処理を常時走らせるなら、一定のマシンスペックは前提になります。なお、こうした活用法はSaix代表の杉田が運営するYouTube「かいちのAI大学」のインタビューで本人が語ったものです。研修プログラムとして体系的に学ぶ場合は、会計事務所のClaude Code活用研修とは|実務が変わる体験型ハンズオンの全内容もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| プログラミングの知識は必要ですか | 導入の第一歩は、業務ルールをマークダウンという軽量な文書形式で書くことです。コードを一から書くより、やってほしい仕事を言葉で整理する作業が中心になります。まずはブラウザ版のClaudeから慣れる方法もあり、税理士のためのClaude入門で7つの活用法を確認できます。 |
| 顧客データのセキュリティは大丈夫ですか | 畠山謙人氏の事例では、ローカルで1次判定し必要時のみAIに上げる2段階構造や、振込先口座などの機密情報を削ぎ落とす関数を採用していました。外部に渡すデータを最小限に絞る設計が前提です。守秘義務を負う士業では、この設計を最初に固めることが不可欠です。 |
| 何から始めればよいですか | 量が多く判断基準が明確な業務から始めます。畠山氏も未登録明細の記帳など会計作業から自動化しました。1業務につき小さなスキルを1つ作り、運用しながら例外をメモリに追記する進め方が現実的です。本記事の各事例にあるプロンプト例を、自社の言葉に置き換えて試すところから始めてください。 |
| 顧問料への影響はありますか | これは価格の引き下げではなく、付加価値の引き上げの話です。畠山氏はスタッフ0人で約60社を担当し、提案書を面談の約30分後に送付できる体制を実現しています。記帳などの作業時間を圧縮し、戦略的な相談など人にしかできない業務に時間を寄せることで、料金体系の見直しや付加価値の引き上げにつなげられます。 |
まとめ
畠山謙人氏の事例から見えるのは、AIを「魔法の自動化装置」ではなく「役割分担の相手」として扱う姿勢です。要点は3つに整理できます。
| 要点 | 内容 |
|---|---|
| 1. 仕組み化が生産性を生む | スキル(憲法)で大枠、メモリ(現地ルール)で例外を管理。約30個のスキルでひとり約60社を回す |
| 2. 責任業務だけを人間が残す | 記帳・ドラフト作成はAI、税務判断・申告書の最終チェック・戦略面談は人間が担う |
| 3. セキュリティを最初に固める | ローカル1次判定→必要時のみAI、機密情報の削ぎ落とし関数で外部送信を最小化 |
次のアクションとして、まずは自社で最も量が多く判断基準が明確な業務を1つ選び、本記事の事例1のプロンプト例を自社の言葉に置き換えて試してみてください。完璧を目指さず、小さく作って運用しながら磨く。それが、所長や少数職員に負荷が集中する事務所が、人を増やさずに回り始める起点になります。
Claude Code 顧問サービス
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