事業計画書を一人で書き上げるのは、想像以上に骨の折れる作業です。市場分析、競合調査、収益予測、実行計画。それぞれに専門知識が求められ、セクション間の整合性も取らなければなりません。
この「事業計画書の壁」を突破する手段として、AIアシスタント「Claude(クロード)」が注目されています。Claudeは長文の論理構成に強く、事業計画書のような複雑な文書作成との相性が抜群です。
この記事では、Claudeを使って事業計画書を作る具体的な手順を、セクション別のコピペ可能なプロンプト付きで解説します。100社以上のAI導入を支援し、自社の公庫融資にもClaudeを活用した経験をもとに、実践的なノウハウをお伝えします。
Claudeで事業計画書はどこまで作れるのか

事業計画書に必要な7つのセクション
事業計画書は、一般的に次の7つのセクションで構成されます。
- エグゼクティブサマリー — 計画全体の要約(A4で1ページ)
- 事業概要 — ビジョン・ミッション・事業内容の説明
- 市場分析 — ターゲット市場の規模・動向・顧客像
- 競合分析 — 競合他社の強み弱みと自社の差別化ポイント
- ビジネスモデル — 収益構造・価格設計・販売戦略
- 実行計画 — マイルストーン・組織体制・スケジュール
- 財務計画 — 売上予測・損益計算・キャッシュフロー
Claudeに「事業計画書を書いて」と丸投げしても、テンプレート的な一般論しか出てきません。セクションごとに自社の情報を渡しながら組み立てるのが、実用的な計画書を作るコツです。
Claudeが得意な領域と人間が補うべき領域
Claudeが力を発揮するのは、文章の構造化と論理展開です。ビジョンの言語化、市場データの整理、競合比較表の作成、タイムライン設計などは、情報さえ渡せば質の高い下書きが出ます。
一方、人間が必ず自分で判断すべき領域もあります。財務計画の具体的な数値(売上目標・利益率・資金調達額)は、経営者の意思決定そのものです。Claudeの出力はあくまで「たたき台」として使い、最終的な数字は自分で検算して確定させてください。
当社(株式会社Saix)の創業時も、事業構造の設計段階でClaudeを壁打ち相手として使いました。「固定費を月1万円レベルに抑える」「月額25万円×4社のサブスク構造で回す」といった設計方針を何パターンも出して比較し、構造の抜け漏れを洗い出しました。最終的に「年間300万円の契約が34社で年商1億円」という積み上げ式のモデルに落ち着きましたが、この比較検討はClaudeなしでは何日もかかっていたはずです。
事業計画書の作成にClaudeが向いている3つの理由

長文の論理構成力がChatGPTより高い
事業計画書は1万字を超えることも珍しくありません。ChatGPTでは途中で論点がズレたり、前半の内容と矛盾する記述が出ることがあります。
Claudeは長文の一貫性を保つ能力に定評があります。「市場分析で特定した課題」が「ビジネスモデル」の差別化ポイントときちんと対応している。「実行計画のKPI」が「財務計画の売上予測」と整合している。このようなセクション間の論理的なつながりを維持できるのが、Claude最大の強みです。
Projects機能で自社データを読み込ませて精度が上がる
Claude有料プランの「Projects」機能を使えば、自社の決算書、顧客データ、営業資料をまとめてアップロードした状態で会話できます。
最新のOpus 4.7は1Mコンテキスト(日本語で約60万〜80万文字、文庫本10〜15冊分)に対応しています。中堅企業の社内資料をほぼ全て一度に読み込めるため、「提案書フォルダ全部」「1年分の議事録」を渡した上で、事業計画を設計してもらえます。従来のモデルでは「前半の資料を忘れる」問題がありましたが、1Mコンテキストでこの制約がなくなりました。
指示の意図を汲み取る力が高い
「融資審査員が納得する書き方で」「投資家向けにトラクション重視で」「補助金の審査基準に沿って」。こうした抽象的な指示にも、Claudeは的確に対応します。事業計画書は提出先によって書き方を変える必要があるため、この柔軟性は実務で大きな差になります。
Claudeで事業計画書を作る5ステップ【プロンプト付き】

ここからは、Claudeで事業計画書を作る5つのステップを解説します。各ステップにコピペ可能なプロンプトを掲載しているので、[ ]内を自社の情報に書き換えて使ってください。
Step 1 — ビジョン・ミッションを言語化する
最初に、事業の根幹となるビジョンとミッションをClaudeに整理してもらいます。
以下の情報をもとに、事業計画書の「事業概要」セクションを作成してください。 【事業情報】 ・事業内容:[具体的なサービス/商品の内容] ・ターゲット顧客:[誰の、どんな課題を解決するか] ・創業の動機:[なぜこの事業をやるのか — 前職の経験や原体験] ・競合との違い:[既存サービスと何が違うか] 【出力形式】 1. ビジョン(1文) 2. ミッション(1文) 3. 事業概要(300字程度) 4. 提供価値(箇条書き3〜5点)
ポイントは「創業の動機」を具体的に書くことです。「売上を上げたい」ではなく、「前職で○○の課題を目の当たりにし、△△で解決できると確信した」のように背景ストーリーを入れると、説得力のある文章に仕上がります。融資面談でも、この「なぜ自分がやるのか」は必ず聞かれるポイントです。
Step 2 — 市場分析・競合分析を作成する
市場分析は事業計画書の信頼性を左右する重要セクションです。
以下の事業の市場分析と競合分析を作成してください。 【事業情報】 ・業界:[業界名] ・ターゲット市場:[B2B/B2C、地域、規模] ・主な競合:[競合社名を3〜5社] 【市場分析に含める項目】 1. 市場規模と成長率(公開データを引用) 2. 市場のトレンドと変化要因 3. ターゲット顧客のペルソナ(具体的な人物像1名分) 【競合分析に含める項目】 1. 競合5社の比較表(価格・特徴・強み・弱み) 2. 自社のポジショニング(差別化ポイント) 3. 参入障壁と自社の優位性 ※ データの出典がある場合は明記。推測は「推測」と注記してください。
Claudeが出す市場データは必ずしも正確ではありません。出力された数値は、経済産業省の統計や業界団体のレポートと照合してください。「推測と注記して」と指示しておくことで、事実と推測の区別がつきやすくなります。
Step 3 — ビジネスモデルと収益構造を設計する
事業計画書の核心部分です。「どうやって売上を作り、利益を残すか」の構造を設計します。
以下の情報をもとに、ビジネスモデルと収益構造のセクションを作成してください。 【事業情報】 ・主なサービス/商品:[内容] ・価格帯:[想定価格] ・課金モデル:[月額/年額/単発/従量課金] ・販売チャネル:[直販/代理店/Web等] 【含める項目】 1. 収益モデルの全体図(どこからお金が入るか) 2. 単価 × 顧客数の売上シミュレーション 3. LTV(顧客生涯価値)の試算 4. 顧客獲得コスト(CAC)の目安 5. 収益化までのタイムライン
当社の場合、「月5万円×20社」と「月25万円×4社」のどちらがスケールするかをClaudeと壁打ちしました。低単価は営業回数が増え、顧客対応に追われ、利益率が削られる。高単価にすると顧客の本気度も上がり、1社あたりの年間契約額300万円が積み上がる。Claudeに「この2パターンの3年後のP/Lを比較して」と依頼すると、構造の違いが数字で見えるようになります。
こうした「選択肢を並べて比較する」作業は、Claudeが得意とするところです。
Step 4 — 実行計画・マイルストーンを策定する
「いつ、何を、どの順番でやるか」を明確にするセクションです。
以下の情報をもとに、12ヶ月間の実行計画を作成してください。 【事業の現状】 ・現在のフェーズ:[準備中/MVP検証中/売上発生済み] ・チーム人数:[人数と役割] ・利用可能な資金:[概算額] 【含める項目】 1. 月別のマイルストーン(12ヶ月分の表形式) 2. 各フェーズの主要タスクと達成基準 3. KPI(月次で追跡する指標を3つ以内) 4. リスク要因と対策(3つ) 5. 必要なリソース(人材・ツール・外注)
実行計画で最も大切なのは、KPIを「現実的な数字」にすることです。「月間売上1,000万円」のような理想ではなく、「月2件の新規受注を12ヶ月続ける」のように、超現実的な目標を置く方が実行につながります。Claudeに「このKPIが未達になるリスク要因を3つ挙げて」と追加で聞くと、計画の穴が見えてきます。
Step 5 — 全体を統合してエグゼクティブサマリーを作成する
Step 1〜4の内容を踏まえて、全体を要約するサマリーを作成します。サマリーは最後に書くのが鉄則です。
以下は事業計画書の各セクションの内容です。 これらを統合して、エグゼクティブサマリー(A4で1ページ、800字程度)を作成してください。 [ここにStep 1〜4の出力内容を貼り付ける] 【サマリーに含める項目】 1. 事業概要(何を、誰に、どうやって提供するか) 2. 市場機会(なぜ今やるべきか) 3. 競争優位性(なぜ自社がやるべきか) 4. 収益見込み(3年間の売上・利益の概算) 5. 資金ニーズ(調達額と使途の内訳)
Claude Projectsを使っていれば、Step 1〜4の会話履歴がすべて保持されているため、「これまでの内容を踏まえてサマリーを書いて」と指示するだけで、整合性の取れた要約が出てきます。
財務計画をClaudeで作る方法と注意点

売上予測・損益計算のプロンプト例
財務計画は事業計画書の中で最も「数字の正確性」が問われるセクションです。Claudeに丸投げするのではなく、前提条件を明確に渡して計算させます。
以下の前提条件で、3年間の売上予測と簡易損益計算書を作成してください。 【前提条件】 ・サービス単価:月額○万円 ・初年度の獲得ペース:月○件 ・解約率(月次チャーン):○% ・粗利率:○% ・固定費(月額):人件費○万、家賃○万、ツール○万 ・変動費率:売上の○% 【出力形式】 年度ごと(1年目/2年目/3年目)の表形式で、 売上・売上原価・粗利・固定費・営業利益・営業利益率を算出してください。 計算過程も示してください。
キャッシュフロー計算をClaudeに依頼するコツ
損益計算書だけでは資金繰りは見えません。特に融資申請では「キャッシュがいつ不足するか」を示す必要があります。
コツは「月次のキャッシュフロー表を12ヶ月分作って」と依頼することです。前提条件に、入金タイミング(翌月末入金など)と支払タイミングのズレを含めると、実態に近い資金繰り表が出ます。
当社では「固定費を月1万円レベルに抑え、利益率30%以上を死守する」という方針をまず決めてから財務計画を組みました。Claudeに「この条件で赤字にならない最低受注件数は?」と聞くと、損益分岐点を即座に計算してくれます。前提条件を変えるだけで複数シナリオを瞬時に比較できるのが、AIを使う最大のメリットです。
数字はClaudeの出力を必ず検算する
Claudeは計算ミスをすることがあります。特に複利計算や月次の積み上げでは、途中で数値がズレるケースが報告されています。
対策は2つです。1つは「計算過程も示して」とプロンプトに入れること。過程が見えれば、どこでズレたかすぐわかります。もう1つは、出力された数値をGoogleスプレッドシートに転記して検算すること。Claudeの出力はあくまで「たたき台」であり、最終的な数字の正確性は経営者自身が担保してください。
Claudeで作った事業計画書は融資・補助金に使えるか

金融機関が事業計画書で見ているポイント
日本政策金融公庫や信用金庫が事業計画書で重視しているのは、大きく3つです。
- 実現可能性 — 絵に描いた餅ではなく、具体的に実行できる計画か
- 数字の裏付け — 売上予測に根拠があるか、楽観的すぎないか
- 経営者の本気度 — 自分の言葉で事業を語れるか
AIで作ったこと自体はまったく問題になりません。問題になるのは「テンプレート丸出し」で、経営者の実体験や事業固有の事情が反映されていないケースです。
AI作成を前提に人間が仕上げるべき3箇所
融資面談では、計画書の内容について質問されます。Claudeが書いた美しい文章でも、自分の言葉で説明できなければ意味がありません。以下の3箇所は必ず自分の手で仕上げてください。
- 創業動機 — なぜ自分がやるのか。前職の経験や原体験を自分の言葉で書く
- 数字の根拠 — 「なぜこの売上目標が達成可能か」を、既存の受注実績やパイプラインで裏付ける
- リスク認識 — 最悪のシナリオを自分で想定し、対策まで語れるようにする
当社は2026年に日本政策金融公庫から融資を受けましたが、事業計画書の下書きにはClaudeを活用しています。構造の設計と文章の整理はClaudeに任せ、数字の根拠と事業への想いは自分の言葉で上書きする。この「AIと人間の役割分担」が、審査を通過する計画書を作るポイントです。
補助金申請で注意すべき独自性の出し方
補助金(小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金など)の審査では「独自性・革新性」が採点基準に含まれます。
Claudeの出力をそのまま使うと、他の申請者と似た表現になるリスクがあります。対策として、自社だけが持っているデータ(顧客アンケート結果、業務改善の実測値、受注済み案件の具体情報)をClaudeに渡し、それをベースに記述させること。「○○業界の△△に特化し、□□社への導入実績がある」のような固有情報を組み込むことで、他社の申請書と差別化できます。
Claude Projectsを活用して事業計画の精度を上げる方法

Projectsに読み込ませるべき資料リスト
Claude Projectsの「プロジェクト知識」に以下の資料をアップロードすると、自社の文脈を踏まえた事業計画書が作れます。
- 直近の決算書・試算表 — 財務の現状を正確に把握させる
- 既存の提案書・営業資料 — サービスの説明を正しく反映させる
- 顧客リスト・受注実績 — 売上予測の根拠データとして使う
- 過去の議事録・MTGメモ — 経営判断の背景を理解させる
- 業界レポート・競合情報 — 市場分析の精度を上げる
Opus 4.7の1Mコンテキストを使えば、これらの資料を全てまとめて読み込ませることが可能です。従来モデルでは分割して質問する必要がありましたが、全社データを一気に渡して「これを踏まえて事業計画を書いて」という使い方ができるようになりました。
カスタム指示の設定例
Projectsの「カスタム指示」に以下のような設定をしておくと、毎回のプロンプトが短くなり効率的です。
あなたは中小企業向けの経営コンサルタントです。 以下のルールで事業計画書の作成を手伝ってください。 ・文書の用途:日本政策金融公庫の創業融資申請 ・文体:です・ます調で統一 ・数値を出す場合は必ず計算過程を示す ・推測と事実を区別し、推測には「推測」と注記する ・専門用語は初出時に平易な説明を付ける ・楽観的すぎる数字は避け、保守的なシナリオを基本とする
このカスタム指示をセットした状態で、Step 1〜5のプロンプトを順に実行すれば、一貫したトーンと品質の事業計画書が完成します。Claudeプロジェクト機能の設定方法は「Claudeプロジェクト機能の使い方|業務が変わるコピペ用テンプレート3選付き」で詳しく解説しています。
よくある質問

無料プランでも事業計画書は作れますか?
作れますが制約があります。無料プランは1日の利用回数に制限があり、Projects機能が使えません。事業計画書のように複数セクションを行き来する作業には、有料プラン(Pro: 月額20ドル)の方が効率的です。無料プランで試すなら、まずStep 1だけ実行して「Claudeで事業計画が作れる感覚」を掴むのがおすすめです。
ChatGPTとClaudeどちらを使うべきですか?
事業計画書の作成に限れば、Claudeの方が向いています。長文の一貫性維持と論理構成力がChatGPTより高いためです。ChatGPTは短い回答やブレスト的なアイデア出しに強く、Claudeは長い文書の構造化に強い。メインツールとしてはClaudeを使い、アイデア発散にはChatGPTを使うという使い分けも有効です。Claude全体のビジネス活用法は「Claude(クロード)ビジネス活用完全ガイド」で詳しく解説しています。
Claudeで作った計画書をそのまま提出していいですか?
そのまま提出するのはおすすめしません。Claudeの出力は「質の高い下書き」です。最終的に経営者自身が内容を精査し、自社の実情に合わせて修正し、数字を検算した上で提出してください。融資面談では計画書の内容を口頭で説明する場面があります。自分が腹落ちしていない計画書は、審査官にも伝わりません。
まとめ

Claudeを活用すれば、事業計画書の作成時間を大幅に短縮できます。ただし「AIに丸投げ」ではなく、経営者自身が設計思想を持った上でClaudeを道具として使うことが、説得力のある計画書を作るポイントです。
この記事の要点は3つです。
- セクションごとに分けて作る — 丸投げではなく、5ステップで自社情報を渡しながら構築する
- 財務計画は必ず検算する — Claudeの計算はたたき台。最終数字は人間が責任を持つ
- 融資・補助金にも使える — ただし創業動機と数字の根拠は、自分の言葉で上書きする
まずはStep 1のプロンプトをコピペして、自社の情報を入れてみてください。Claudeとの壁打ちを通じて、頭の中にある事業構想が「人に伝わる計画書」に変わる体験ができるはずです。
Claudeを経営の壁打ち相手として活用する方法は「Claude Codeで経営者の壁打ち相手を作る」で、経営者のAI活用全般については「経営者のAI活用は何から始める?」でも解説しています。
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